リファレンス

マウスピース矯正用CAD『Orth’up(オーソアップ)』のセミナーを受けて来たよ。

今回の記事は歯科関係者向けの記事です。

手軽に始められて痛みも少ないという触れ込みで、若い女性を中心に大人気のマウスピース矯正
このマウスピース(アライナー)は矯正歯科医師から送られた印象データを矯正メーカーが受け取って製作されるのが一般的で、その場合は残念ながら歯科技工士に出番はありません。

この度、名南歯科貿易株式会社様主催の『矯正技工士が教える矯正アライナーのCADデザインセミナー』を受講するため大阪まで行ってまいりましたので、その内容について簡単にシェアしたいと思います。

なぜ今歯列矯正が必要なのか

DT.Monson
マウスピース矯正が人気になってるせいか、最近矯正技工の仕事が減って来てるような…
だったら技工士用のアライナーCADを導入してみたらどう?
DT.Monson
CADか〜。難しくないのかな?
Dr.Bonwill
アライナーCADって…”インビザライン“ のこと?
今はインビザラインに発注しなくても歯科技工士用のアライナー専用CADが開発されてるんだよ。
DT.Monson
これまでのノウハウが活かせるならぜひやってみたいな。

歯冠修復と矯正

当社はクラウンブリッジを専門とするラボラトリーです。
一見すると矯正技工とは無縁のようですが、セラミックワークとインプラントワークを主に受注しているため、審美的な要求の高いケースに多く出会いますし、歯科技工物だけで見た目を改善しようとするケースも多いんですね。
巷ではクイック矯正などと呼ばれていますがそれは矯正でもなんでもないですし、唇舌面で整合性が取れていない歯科技工物はなるべくなら作りたくありません。
少し矯正してからセラミックを製作できればどんなにいいだろうと思わされる機会は決して少なくないのです。

インプラントにおいても手術後の歯列の移動は難易度が違うので、できれば術前から歯科技工士として関わりたいと思っています。
歯周治療と矯正治療と補綴治療は本来切り離せないはずですし、質の高い歯科治療を提供するためには歯科技工士が早い段階から治療に関わることは絶対に有利です。
とは言っても矯正技工は特殊な分野でもあったので、これまで参入することはありませんでした。

デジタルで歯列矯正に取り組むメリット

そこでアライナー矯正です。

オーソアップ画面
出典:digileaYoutube動画より

理想的な位置を目指してわずかずつ規定の量を移動させるというのはデジタルソリューションが最も得意とする分野のひとつではないでしょうか。
CADを用いたアライナー矯正であればデジタルでのシミュレーションの役割が非常に大きいため、ノウハウを早く積んでいけるのではないかと思いセミナーを受講した次第です。

将来的に導入までこぎつければセラミック治療との抱き合わせでの値引きなども考えています…(小声)

マウスピース矯正とは

患者はアライナーと呼ばれるマウスピースを装着し、シミュレーションされた理想の歯列へ段階的に移動させる歯列矯正のことです。

現状の歯列を『イニシャル模型』とし、矯正終了時の『セットアップ模型』に至るまでのステップ(通常は10〜15ステップ)毎にアライナーを製作し、歯科医院へ納品します。
患者はそのアライナーを各ステップ2週間を目安に順次つけかえていき、セットアップの歯列を目指します。

マウスピース矯正のメリット

術者にとってはシミュレーションから得られる情報量の多さというのが最大のメリットだと思います。
各ステップでは「どの歯をどの程度動かす必要がある」ということが数字で表されるため、予見しながら取り組めます。
さらに移動途中で再印象を行いシミュレーションデータと重ねて解析すれば、想定と動きの違う歯牙をいち早く発見し、他のアプローチに切り換えることも可能です。
こうしたメリットはデジタルワークでなければ絶対に得られないことです。

マウスピース矯正のデメリット

可撤式であるために患者の協力が不可欠ということです。
アライナーは一日のうち20時間以上装着し続けなければ効果を得られないので、自由気ままに外されてしまうと思うような結果になりません。
術者によるコントロールが不要な分通院回数も減ってしまうため、患者へ十分な説明を行い理解を得ることが重要です。

また、ステップ数が多い複雑な歯列矯正には不向きなため、拡大時は拡大装置を使い、移動や保定はアライナーを使うなどの工夫が必要な場合もあります。

インビザライン とオーソアップの違い

マウスピース矯正といえば『インビザライン 』が有名です。
インスタなどSNSでも”インビザライン“で検索すると、歯列矯正中の人の投稿がたくさんヒットします。

ぼくの周りでもインビザラインを導入している歯科医院さんをインターネットで検索して、マウスピース矯正を受診する人が増えています。
”マウスピース矯正=インビザライン “と認識されるほどの過熱ぶりです。

この『インビザライン』と『Orth’up(オーソアップ)』の違いについて簡単にまとめておきます。

『オーソアップ』は”いつもの歯科技工士“が設計する

インビザラインは印象データをメーカーに送りますが、『オーソアップ』は普段からお取引のある歯科技工所にデータ(もしくは石膏模型)を送ります。
(*『オーソアップシステムを導入している歯科技工所』にデータを送るという意味です。)

この場合の利点はいつもと同じノリで発注ができるということと、実際のアライナー製作者とコミュニケーションが取りやすいということです。
シミュレーションの初期段階から3Dレポートで設計の確認を行うことも可能ですし、場合によってはレントゲンと照らし合わせたり、PCを持ち込んで目の前で設計を見せることなどもできなくはないです。(ラボのサービス内容によります)

『オーソアップ』は納品や料金体系での自由度が高い

インビザラインの場合は1症例に対するチャージが基本だったと思いますが、オーソアップの場合は各ラボの規定次第でチャージ方法が異なります。
シミュレーションのみでデザイン料を発生させて、その後はアライナー毎の納品なども可能ですし、2〜3ステップ毎の納品や、全ステップ一括納品など、様々なチャージ方法が可能になるでしょう。
オーソアップはステップごとに納品することができるので、途中でアタッチメントを付与したり変更したりすることも容易です。

『オーソアップ』は治療途中でのフォローアップが得意

オーソアップのデザインソフトの特徴として『途中印象分析』に強みがあります。

想定したよりも歯の動きが悪い場合や、歯の痛みが出てきた場合などに再印象を行い、現ステップでのシミュレーションと重ねあわせて解析することにより、シミュレーションと現実とのズレがある箇所を特定することができます。
この機能により、特定の歯牙に足りない動き(トルクの過不足など)を発見し、アタッチメントを付与したり、指定した歯の移動を止めたりデザインを再編集することが可能です。
こうして再編集されたデザインは、次ステップのアライナーから反映されることになります。

『オーソアップ』はスピーディーでオープンでmade in Japan

スタートアップ時点でのインビザラインはシリコン印象をアメリカに送付する必要がありました。
印象はそこからさらにコスタリカの製造工場へ送られ、そこでスキャン、シミュレーション、アライナー製作が行われて日本へ送り返されるという流れです。

その期間は約4〜6週間。
まぁ、無駄ですよね。
しかもコスタリカて…いったい誰が作ったんでしょうね?
その説明は患者さんにされてるのかな?

その後開発された口腔内スキャナーに関しても、同社の『iTero』でのデータしか受け付けていなかったりと、今後の行方はわかりませんが基本的にクローズ体質であることに変わりないでしょう。
デザイン変更に対する保証なども、ケツを叩かれてようやく対応したようですが…

その点『オーソアップ』は日本の歯科技工士が日本の歯科技工所でスキャン、デザイン、アライナー製作まで行うことがほとんどです。
到着待ちのコストも期間も不要で、STLデータならどのスキャナーからのデータでも編集製作できます。

おわりに

オーソアップセミナー
セミナー終了後。男前すぎるフランス人講師と。

今回のセミナーを受けて、日本の歯科技工士が矯正用アライナーのデザインを行うことは、歯科医師や歯科技工士、患者にとって十分メリットになるように感じました。
クラウンブリッジ専門の歯科技工所からすると、矯正技工の分野はあまりに大胆に歯列を変えてしまうので怖いイメージがありましたが、無理矢理セラミックで綺麗に並べてしまうのも乱暴です。
アライナー矯正でカバーできない範囲の矯正技工はどのようにフォローしていけばいいか、患者さんの経済的な負担とどう折り合いをつけるかなどの課題はありますが、概ね前向きに考えられるシステムかなと思います。
競合するシステムはマエストロ3Dの『Ortho Studio』など。

こうしたデジタルソリューションが今後も生まれて育っていくと、歯科技工物の海外発注も行いやすくなるでしょうし、ルール的にもゆるくなるでしょうし、う〜〜む。
色々と考えさせられる分野ですね。

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