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【シェードテイキングの注意点】歯科技工士が困るシェードテイクの失敗例5選。

シェードテイキング写真は、患者の歯の色を歯科技工士に正しく伝えるために記録するものです。
一般的には、シェードガイドと一緒に患者の口腔内を撮影し、歯科技工所でも患者の歯の色が確認できる状態にすることが目的です。

セラミック技工においては、このシェードテイキング画像が非常に重要な参考資料になるのですが、撮影に失敗してしまって正しいシェード情報が伝わってこない場合もあります。

今回は実際のシェードテイクで起こりがちな失敗例を5つ紹介していきますので、それぞれ確認していきましょう。

1.シェードガイドやシェード番号が写り込んでいない。

最も多いミスの一つが、シェードガイドが写っていない写真です。
シェードタブは写っているものの、そのシェード番号が写り込んでいないという場合も多いので、どのシェードタブが何のシェード番号なのかがわかるように撮影しましょう。

歯科技工士は手元にあるシェードガイドと、シェードテイク写真に映されたシェードガイドとを見比べながら、それを参考に患者の歯冠色を目指して作業をしています。
そのためシェードテイク写真に写っているシェードタブが何なのかがわからなければ、作業が困難になります。
撮影時はしっかりとシェード番号が画角に収まっているかチェックしましょう。

シェード番号が写り込んでいることを確認

【解決のヒント】
シェードテイキング写真の目的はシェード情報を伝えることなので、5枚法のような口腔内写真の構図の規格性を考える必要はありません。
シェードテイク用の写真の撮影時に構図を決める際は、画面の水平などよりも、シェードタブや、シェードタブの番号を画角に収めることを意識しましょう。

2.シェードガイドを当てる位置が前後的にズレている。

ガイドがターゲットより手前に来ると明るくなる。

シェードテイクを行う場合は、原則として接写用のレンズとストロボを使用します。
この際に注意したいのが『光の逆2乗則』という法則です。

ガイドがターゲットより奥にあると暗く見える。

接写撮影でストロボを使用する場合は、被写体と光源の位置が非常に近くなるため、シェードタブを前後的にズレた位置に当ててしまうと、色味(特に明度)が大きくズレてしまいます。
本来のシェードガイドの色味が極端にズレてしまえば、対象にしたい歯牙の参考にできなくなってしまうので、注意しましょう。

正面から撮れない時は、ガイドと参照歯が作る軸を意識する。

上方向や下方向から撮る時も同様に、参照歯とガイドが作る角度に注意する。

【解決のヒント】
参考にしたい歯牙の切縁と、シェードガイドタブの切縁を、揃えるように当てましょう。
また、参考歯とシェードタブを揃えたら、それらのおりなす中心の軸とレンズの中心軸を揃えることも重要です。
焦点距離の長いレンズを使用して、ストロボ光源を離すことも有効です。

3.カメラの設定が正しくない。

カメラの設定間違いも非常に多いミスです。
写真撮影のセンスを磨く必要はありませんが、最低限のカメラ操作は理解しておきましょう。

ここでは特にミスが起きやすいカメラ設定の3つの注意点をご紹介します。

【カメラ設定の注意点1】ホワイトバランスが取れていない。

ホワイトバランスの設定が、光源と合っていない例。

ホワイトバランスとは、白いものが白く写るように補正する機能のことです。
全てのデジタルカメラに備わっている設定機能です。
光源の種類が変わると写真の色味も変わってしまうので、光源が変わったことをカメラに教えてあげる必要があります。
基本的な設定項目なのでよく理解しておきましょう。

【解決のヒント】
グレーカード等を使用したマニュアルホワイトバランスの設定方法を学ぶのが1番です。
もしくは色温度を表すK(ケルビン)の数値をマニュアル固定で設定するだけでも、ある程度改善されます。
『オートホワイトバランス』の設定では、撮影するたびに色の誤差が生じてしまうため、おすすめではありません。

【カメラ設定の注意点2】被写界深度が浅すぎる。

ミックス光源では色の規格性も失われる。

『絞り』の設定ミスで起こります。
特にマクロ撮影ではボケが大きくなりがちです。
レンズによって被写界深度は違うので、レンズ性能を発揮しやすい『絞り値』を事前にチェックしておきましょう。
また、絞りを開けすぎると、設定によっては環境光も多く取り込んでしまうため、撮影するたびに違う色味の写真となってしまい、規格性が失われてしまうので注意が必要です。

また、シェードテイクは基本的に『マニュアルモード』で撮影します。


カメラやストロボのオートモードを使用すると、色や被写界深度の規格性が失われるので、基本的なマニュアル設定を理解しましょう。

【解決のヒント】
歯列の手前から奥まで解像度を落とさずにピントを合わせるには、イメージセンサーサイズ、レンズ、絞り設定がそれぞれ関係してきます。
おおまかには「APS-Cサイズ」「50mm以上のマクロレンズ」「F16〜22」を目安にすると初心者にも扱いやすいでしょう。

【カメラ設定の注意点3】正しいピクチャースタイルが設定できていない。

『ポートレート』モードは赤みが増し、明るめの印象に。

『ピクチャースタイル』とはCANON機での設定項目(NIKONはピクチャーコントロール)ですが、色味やディテールの表現を設定する項目になります。
フィルムカメラの時代ではフィルムの種類やメーカーによって、好みの表現を持つフィルムを選んでいましたが、デジタルカメラではこれらを『ピクチャースタイル』によってコントロールします。

【解決のヒント】
歯科でのシェードテイキングを目的とする場合は『ニュートラル』での設定を基本とします。
『ニュートラル』は、階調の再現を優先し、若干ねむたい印象に仕上がりますが、色味が誇張されることがないという特徴があります。
CANONには『忠実再現』というピクチャースタイルもありますが、実際の”見た時の印象”に写真を近づけるため、彩度やシャープネスが若干強調されます。
厳密にはどちらでも良いですが『風景』や『ポートレート』といった設定は、色味が大きく変わるので注意しましょう。

4.適切な撮影機材が使われていない。

スマホでそのまま撮影しても、光源もカメラ設定もバラバラ。

シェードテイクに使われているカメラやストロボが、撮影要件に合致していない場合もあります。
高級なカメラである必要はありませんが、ストロボなしのスマホだけでは不十分かもしれません。

特に重要となるのはレンズとストロボでしょう。
シェードテイキングの様に色調の規格性が重要視される場合は、露光の全てをストロボに頼る方がコントロールしやすいので、接写用のストロボの準備は必須だと言えます。

【解決のヒント】
アプリや特別な光源を用意することでスマホで撮影することもできますが、今は中古機材も入手しやすく、安い接写用ストロボなどもあるので、デジタルカメラとスマホの使い分けがおすすめです。
日頃の臨床や簡易的な口腔内写真の記録はスマホを活用し、発表や症例作品作りまで予定したものはデジタルカメラを活用するのがおすすめです。

5.参考にすべき歯が明確ではない。

最初に決めるのは、目指すべき参照歯。

シェードテイキングでは、補綴予定の部位(対象歯)の参考になる天然歯(参照歯)と、色見本を対比させて記録することが基本です。
口腔内にある『どの歯に似せて作りたいのか』を明確にして技工士に伝えましょう。
『参照してほしい歯』が決定したら、その歯の色調に最も近似したシェードガイドを選び、参照歯の近くに当てがいましょう。
この場合、色味がかけ離れたシェードタブを複数並べられると、逆に混乱してしまうので、できれば1本、多くても3本以内までシェードガイドを絞り込みましょう。

基本的には切縁同士を合わせるとわかりやすいですが、当てにくい場合は横に並べても構いません。
上述したように、『光源との前後的位置』や『色見本と参照歯が作る中心軸とカメラの中心軸』にも注意しましょう。

【解決のヒント】
患者さんとしっかりコミュニケーションをとって、どの歯を基準にしてどのように作って欲しいかをヒアリングしましょう。
場合によっては反対側より少し明るい色調を望まれることもありますが、それが適切であるかどうかをしっかりと確認し、歯科技工士にもそうした情報を伝えることが重要です。
ホワイトニングなどをご希望されている場合は、先にホワイトニングを済ませてから補綴に進んだほうが良いでしょう。

【番外編1】歯牙が乾燥して白くなっている。

シェードテイキングする参照歯は、日常の潤った歯冠色であるべきです。
様々な処置を行った後にシェードテイキングを行うと、歯が乾燥してしまい本来の色よりもかなり白くなってしまいます。
この状態では正しい色味が再現できず、細部表現に重要な内部構造や透明感の観察もできなくなります。

支台歯も観察したいのでテックやプロビを外した写真も必要ですが、極力スピード感を意識して撮影しましょう。
乾燥を防ぐために、適宜水分を与えることも効果的で、技工作業中は『グリセリン』の反射率が唾液と近く、乾燥もしにくいので、形態修正を行いながらグリセリンを薄く塗布して色調を確認しています。

【番外編2】マイナーなシェードガイドを使っている。

取引中の歯科技工士から指定された場合を除き、マイナーなシェードガイドは使わないようにしましょう。

最近は格安のシェードガイドも出回っておりますが、信頼性も乏しく、歯科技工士が全く同じものを用意しなければ意味がありません。
業界標準として使われている『VITAクラシカルシェードガイド』か『VITA3Dマスターシェードガイド』を使いましょう。

おすすめは『VITA3Dマスターリニアシェードガイドキット』です。

【番外編3】紙に印刷して渡している。

シェードテイキングの技術で最も重要なのは、正しく色を記録して相手に伝えることです。
『白色』を同じ『白色』として伝えなければなりませんが、『印刷』という工程を追加することで、難易度は格段に跳ね上がります。
美術館の図録のように、本物の色や質感を紙に記録するようなことは、素人にはまず不可能なので、デジタルデータを活用しましょう。
場合によってはラボ内で色調のデータ補正を行うこともありますが、それも印刷された紙ではできないことなので、注意しましょう。

理想的なシェードテイクのまとめ

シェードテイキング写真には様々なルールが存在しますが、一つ一つチェックすれば何も難しいことはありません。

一番大事なことは再現したい歯の色調を、正しく技工士に伝えることなので、画角などは正直どうでも良いです。
色の情報を伝えるという意識を最優先させましょう。

色情報が伝わることが大事。

・シェード番号を写す。
・対象歯と色見本の前後的位置を揃える。
・正しいカメラの設定を守る。
・機材は光源を意識して選ぶ。
・目標を明確に伝える。

以上に注意して、一歩進んだシェードテイクに挑戦しましょう。

シェードテイキングに関する全ての記事へのリンクをまとめました。

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