VITA-3Dマスターシェードガイドを使った『正しいシェードテイキング方法』を身につけよう。

シェードテイキングといえばカメラの撮影技術のように思われるかもしれませんが、それはちょっと違います。

カメラで撮影する以前に、正しいシェードガイドを選択できていますか?

どんな色調の歯牙に対しても毎回『A3シェードガイド』をあてがって撮影していませんか?
もしそうだとしたら歯科技工士に正しく色情報が伝わっていないかもしれません。

今回はカメラを使わず、正しく歯の色を観察し、的確な色調の指示を歯科技工士に伝えるための方法をお伝えします。

前半は『シェードテイキングの流れ』、後半は『色の正しい伝え方』です。

歯科技工士が立ち合いを行う際にも使えるテクニックですので、是非参考にしてくださいね。

視覚比色法と限度見本

審美歯科治療で行われるシェードテイキングの方法は、まず完成技工物が目指すべき『対象にする歯牙』を決定し、続いて手持ちのシェードガイドの中から『参考にしたい歯牙見本』を選択します。
この評価方法を『視覚比色法』と呼び、この時に使用する歯牙見本(シェードガイド)のことを『限度見本』と呼びます。

視覚比色法は、限度見本を用いながら、その「見本を基準に色を評価する方法」と理解しておきましょう。

つまり、色見本は参考材料になれば十分で、『対象にしたい歯牙』とピッタリ一致している必要はありません。

シェードテイキングにおけるシェードガイドの目的

もちろん色見本と『対象にしたい歯牙』の色は、近いほど参考にしやすいのは事実ですが、マイナーなシェードガイドやカスタムシェードガイドを使ってまで完全な一致を目指す必要はありません。

対象歯牙と限度見本を完全に一致させることはほぼ期待できませんし、どのみちどこかで『見比べて作る』必要が出てきます。

対象歯牙と完全に一致したカスタムシェードガイドをその都度作製し、それをラボに送ってファイナルを製作することができれば良いですが、現実的な方法ではないでしょう。

『素材の色』と『シェードタブ』の落とし穴

こちらの画像は様々な歯科メーカーが販売している『A3シェード』のジルコニアフレームを並べたものです。

ご覧の通り各社が主張する『A3』の色はバラバラで、我々歯科技工士はこれを補正する必要がありますが、全ての色の傾向を把握することは不可能です。

こうした事情もあり、『対象にしたい歯牙とピッタリ同じ色』を探し当てたところで、肝心の歯科技工材料で発色の違いがあるため、結局は比色しながら作ることになるのです。

同じメーカーのシェードタブについても、製造時期によって微妙に色味が異なり、チェアサイドとラボサイドにあるシェードガイドが完全に同じ色であると考えるのも注意が必要です。

フルジルコニア冠のシェードテイクに最適な『オリジナルシェードガイド製作キット』はシカストックにてご購入頂けます。

ワンランク上を目指すならVITA-3Dマスターシェードガイドを使いこなそう

材料メーカーの言う『A3』でさえ正しく色が出ないのに、対象歯牙と完全に一致するシェードガイドを探し当てることに心血を注ぐ必要はありません。

それよりも『ビタ社の3Dマスターシェードガイド』を正しく取り扱い、正しく比較して伝える方法を身につけましょう。

『3Dマスターシェードガイド』のラインナップを揃えていれば『比色』という目的はほとんど達成できます。

準備すべきシェードガイド

VITA-リニアシェードガイド
3Dマスターシェードを採用し、さらに扱いやすくなったVITA社のリニアシェードガイド

『3Dマスターシェードガイド』をおすすめする大きな理由ですが、それは『3Dマスターシェードガイド』が『明度』の基準作りを重要視しているためです。

世界で最も使われているのは間違いなく『VITAクラシカル(通称ビタパン)シェードガイド』であり、歯科材料メーカーもこれに準じてラインナップを用意していますが、この『ビタクラシカルシェードガイド』では『明度』を評価することができません。

歯列内において『明度』のズレは非常に目立ちます。
そのため明度の決定を最初に行う『3Dマスターシェードガイド』がシェードテイキングに は有利になります。

『VITA3Dマスターシェードガイド』の製品でも、特に『VITA3Dマスターリニアシェードガイド』が非常に使いやすく、チェアサイドや技工士立ち合いでの利用におすすめです。

『ビタ3Dマスターシェードガイド』の番号の見方

リニアシェードガイドキットに限らず、VITA3Dマスターの数字にはルールがあります。

VITA3Dマスターのシェード番号は3桁で、『0M1』から『5M3』まで29種類のシェードタブが用意されています。

最初の『0~5』の数字が『明度』を表し、数字が小さいほど明るく、数字が大きいほど暗くなります。0はブリーチ色です。

2桁目のアルファベットは『色相』を表し、『L』が黄色みのある色で『R』が赤みのある色、『M』が中間色です。

3桁目の数字が『彩度』を表し、数字が小さいほど薄い色で、数字が大きいほど濃くなります。

『ビタ3Dマスターリニアシェードガイド』を使った、正確なシェードテイキングの方法

『VITA3Dマスターリニアシェードガイド』のケースを開くと、最初に出てくるシェードタブグループが『M2グループ』のセットです。

このグループには『色相』と『彩度』を『M2』に統一したシェードタブが揃っていて、『0〜5』の明度だけが違うグループになっています。
まずはこのグループを使って『対象にする歯牙』の『明度』のみを決定します。

今回の例では全体の明度として『3』を選択しました。

明度の弁別を行う際はシェードタブを少し遠ざけて、目を細めながら観察するのがコツです。

『明度』の番号(0~5のいずれか)が決定したら、次は明度の番号に振り分けされたシェードタブグループを取り出します。
そのグループの中から、今度は『対象にする歯牙』の『彩度』を決定します。
明度はすでに決定されているので、色の濃さだけに注目して観察しましょう。

『対象にする歯牙』の色の濃さが把握できたら、最後に『色相』を決定します。
黄色みと赤みを意識して、近いものを選び出します。

今回の例では『3M2』をベースに参考にすべきであると判断できました。
歯型部近くの参考のために『4M2』も一緒に並べています。
自身が最も近いと思えるシェードタブを選択したら、あまり多くのタブを並べないことも肝心です。
技工士が確認する際に参考にするのは、最も近い基本色ですので、多くのタブが並べてあると判断に困ります。
シェードテイキング画像を送る際は、シェード番号が必ず写るように配慮し、一緒に写すタブは多くとも3本位内にしましょう。

以上が『VITA3Dマスターリニアシェードガイド』を使用したシェードテイキングの流れになります。

カメラ撮影以前のシェードテイキング

『VITA3Dマスターリニアシェードガイド』を使って、順を追って選ばれたシェードガイドであれば、『比色』するに十分足りるものを選択できているはずです。

ここまでが『カメラ撮影以前のシェードテイキング』ということですね。
カメラの撮影については以下の記事も参考にしてください。

あとはこのタブを対象歯牙に当ててシェードテイキング写真を残しましょう。

次のページからは『色情報を正しく相手に伝えるための表現方法』について解説していきますよ。

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