VITAPANクラシカルと3Dシェードマスターの比較【前編】

VITA-リニアシェードガイド

シェードテイクで使用する業界標準と呼べるシェードガイドと言えば『VITAPANクラシカル』と『3Dマスター』ではないだろうか。
特に『VITAPANクラシカル』における、「A3」や「B4」といった伝達方法は、臨床の現場でも広く用いられ、どのシェード番号がどのような色か、おおよそ把握されていることだろう。

今回の記事では『VITAPANクラシカル』と『3Dマスター』を比較することで、シェードガイドの役割とその特徴を解説し、次回にはそれぞれのシェード番号を関連付けた相関表を紹介したいと思う。

『VITAPANクラシカル』の特徴

VITAクラシカルシェードガイド

VITA-classical (VITA社ウェブサイトより)

VITA社の『VITAPANクラシカル』シェードガイドは、彩度を表す数字と、色相を表すアルファベットを用いた限度見本である。
彩度を表す数字に関しては、数字が大きいほど彩度が高くなるので、理解しやすいかと思う。
ここで注意して欲しいのは、彩度明度を混同しないことである。

”A2”と”A3”で例示すると、A2よりもA3のほうが彩度が高い(色が濃い)ことを表し、『”暗い”というわけではない』ということを理解しなければならない。

一般的に彩度が高いほど明度的に暗く見える傾向にあるが、ここでの観察基準は”彩度”であることを認識すべきである。
続いて、色相を表すアルファベットに関しては、これは覚えるしかないだろう。
A系統は『赤みがかった茶色系』、B系統は『赤みがかった黄色系』、C系統は『灰色系』、D系統は『赤みがかった灰色系』である。
平均的な日本人は、A系統よりさらに赤みがかった傾向にあるように思う。
『VITAPANクラシカル』シェードガイドは最も広く一般的に使用されているシェードガイドではあるが、明度の判断基準が乏しく、その分システマチックなシェードテイクは行えない。

昔からある色評価の基準であるため、他社のシェードガイドや、築盛陶材、レジンなども、この「”A〜Dのアルファベット”+”数字”」で表されることが多い。その際も彩度色相の関係性はほぼ同じである。
ただし同じA3シェードでも、メーカーが違えば微妙に色調が異なるので、全ての色を把握するのは容易ではない。
また、VITA社のシェードガイドでさえ個体でのバラつきがあり、シェードガイドに使用する陶材なども公表していないため、絶対的な評価基準というものは存在しない。

『3Dマスター』の特徴

VITA-3DMasterシェードガイド

VITA-3Dマスター(VITA社ウェブサイトより)

『3Dマスター』シェードガイドでのシェード番号は”3M2”のような3桁の数字とアルファベットで表されている。
最初の数字が明度、真ん中のアルファベットが色相、最後の数字が彩度を表している。
数字に関しては数字が大きいほど明度は低く(暗く)なり、彩度は高く(色が濃く)なる。
アルファベットは”L/M/R”の3種類の色相を示し、それぞれ『L=黄色』『M=赤黄色』『R=赤色』系統の色相を表している。これをVITAクラシカルシェードと照らし合わせるなら『L=B・C系統』『M=A系統』『R=A・D系統』というイメージに近い。VITAクラシカルシェードと比べ、色相を表す基準は減っているがVITAクラシカルの色調はほぼ網羅しているように思う。
また、明度の基準を設定しているため、必然的にシェードタブの数も増えており、基本シェードのみでも26色のタブが用意されている。

まず始めに1〜5で分けられたグループから、最適な明度を選択したのち、同一明度のグループから色相彩度を決定していくため、システマチックなシェードテイクが行えるのが『3Dマスター』の特徴だろう。
また明度という基準を設けていることにより、VITAクラシカルシェードガイドと比べ、さらに幅広い色調を評価することができる。
特に「0のグループ」や「5のグループ」などはVITAクラシカルシェードガイドでは表現できない色調となっている。
VITA社の3Dマスターは幅広い色調を有し、システマチックにシェードテイクを行える、扱いやすいシェードガイドである。

『リニアシェードガイド3Dマスター』の特徴

VITA-リニアシェードガイド

VITA-リニアシェードガイド(VITA社ウェブサイトより)

VITA社のシェードガイドとしては他に『リニアシェードガイド3Dマスター』というシェードガイドもあるが、色の基準は上述した『3Dマスター』と同じものとなる。
『3Dマスター』との違いは、明度を判定するためのシェードタブが独立したグループとしてあらかじめ用意されているのが大きな特徴となっている。
術者はまず『0〜5』で表された6本のシェードタブから、対象となる歯牙の明度のみを始めに決定する。
つづいてその明度タブで選択した番号のグループから、色相彩度を選択することにより、最適なシェード番号を導くことができるシステムとなっている。
『明度』と『色相彩度』を切り離して観察することができるので、他の色の情報に惑わされることなく、的確に対象歯牙の色調を評価することができる。

色基準としては『3Dマスター』と同じものではあるが、シェードテイクのしやすさで言えばこの『リニアシェードガイド』が最も優れているだろう。
歯科技工物の製作においては『3Dマスター』があれば充分と言えるが、チェアサイドでのシェードテイクにはこの『リニアシェードガイド』をおすすめしたい。

まとめ

最も広く使われているシェードガイドはVITAクラシカルシェードガイドではあるが、色を評価できる範囲が狭く、シェードテイクにはコツや慣れが必要となる。
シェードテイクには『3Dマスター』か『リニアシェード3Dマスター』のシステマチックなシェードガイドが非常に有効であるが、『3Dマスター』のシェード番号を基準にする場合、それらのシェード番号はVITA社独自のものであることから、VITAクラシカルのシェード番号への置き換えが必要となる場面のほうがはるかに多いだろう。

次回の記事では『3Dマスター』のシェード番号と『VITAクラシカル』のシェード番号の相関表を紹介したい。

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