適合実験用の模型を準備しよう〜!
歯科技工所。
英語で言えば『Dental Laboratory』。
略して『ラボ』。
ラボラトリーということは研究所的なニュアンスを多分に含むと思うのですが、現実ではただの作業場と化してしまっている技工所がほとんどではないでしょうか。
新たな技術を日常臨床で取り入れようとするときは、しっかりと実験して…検証して…といった積み重ねの姿勢が非常に重要です。
だって…研究所ですから!
今回は実験用の模型作りについてです。
適合実験、やるしかない
[talk words=”CAD/CAMも導入したし、さっそくデータ受注をはじめるぞ〜!” avatarimg=”https://m-cera.jp/wp-content/uploads/2019/07/dt5.jpg” name=”DT.マメロン” align=r]
[talk words=”データ受注はデジタル歯科の象徴の一つですよね!でもデータの検証はちゃんとしてます?” avatarimg=”https://m-cera.jp/wp-content/uploads/2014/09/prof.jpg”]
[talk words=”え??データ受注なんてメールでビューーんでいいんでしょ?なんてったってオープンデータだもん!” avatarimg=”https://m-cera.jp/wp-content/uploads/2019/07/dt3.jpg” name=”DT.マメロン” align=r]
[talk words=”うちから送ったSTLデータから作った技工物が届いたけど、正直イマイチなんだよね。これじゃ結局昔のやり方で型取りしなきゃ…” avatarimg=”https://m-cera.jp/wp-content/uploads/2019/07/dr3.jpg” name=”Dr.カスプ” align=r]
[talk words=”CAD/CAMや3Dプリンターで技工物を作る工程ではたくさんのソフトを通過させるから、どうしても機械の相性の問題は出てくるんですよ。対応できるように検証を重ねるしかないでしょうね。” avatarimg=”https://m-cera.jp/wp-content/uploads/2014/09/prof.jpg”]
適合実験に必要な模型の要件
まずはじめに実験の目的を設定しましょう。
目的次第では実験用模型の要件が変わってきますよ。
今回はIOSで撮影されたデータがラボに届いた場合を想定しているので、できるだけ口腔内と同じ条件の模型を作りたいと思います。
- 『単冠の支台歯への戻り精度とコンタクトの強弱精度』
- 『連続する2歯の支台歯への戻り精度とコンタクトの強弱精度』
- 『より臨床的な支台歯に対する各社IOSの読み取り精度』
この3つを検証できるような模型を準備します。
模型の種類
口腔内と同じ条件で観察したいので、検証用の模型は可撤式模型ではなく単一模型をベースにします。(歯は抜いて観察できませんからね)
さらに、コンタクト調整が必要な場合に備え復位が可能な可撤式模型も用意します。
模型の素材は樹脂ではなく石膏で製作します。
今回の実験では機械的なスキャン精度(データの再現性や被写界深度など)を検証したいため、反射の影響を受けにくい石膏模型でテストを行います。
模型がアクリルの場合は適合精度がダメだった時に、スキャナーやCAD/CAMではなく模型に問題があるかもしれません。
スキャナーメーカーから「アクリルは撮れないけど口腔内は撮れます。」と言われてしまうと検証にならないので、問題の切り分けのためにも石膏模型を使うのがベターでしょう。
適合の検証と形成レベル
適合もチェックするためにマージン部は1mm以上の縁上にしておきます。そうすることで純粋な適合レベルを目視できます。
こんな縁上形成は実際の口腔内と違うじゃないか!と思われるかもしれませんが、マージン部が撮れないなどの余計なトラブルを排除するためです。
「模型が悪いからスキャンできなかった!」とならないためにも、完璧にスキャンできる状態である必要があります。
(とは言え各スキャナーの撮影精度の差も見てみたいので、わざと縁下形成の部位も作りましょう。)
地道に模型を準備するよ
オリジナルで模型を準備するのは非常に大事なんですが、結構まじでめんどくさいです。
でも、地道にやるしかありません。
これもなかなかな苦労をしながら作ったもので、これまでも説明用模型や実験用模型の数々はこのアクリル模型をベースに作ってきました。
元は石膏の単一模型でしたが、歯牙一本一本を分割して歯根部分のスタンプを作り、また型枠に戻して歯肉側の模型を作り、ツヤを出すために一度樹脂で模型を作り、それをまた型取り・・・め・ん・ど・い!!
でも、やるしかないんですね〜。地道に。
これからも、、めんどいけどやります。
模型作り
ということで模型作りスタートです。
歯牙模型、形成支台歯模型、歯肉模型のそれぞれに超硬石膏を流します(img01)。
歯肉模型に全ての歯牙が正確に戻るよう内面調整とコンタクト調整を行います(img02)。
適合実験の箇所は形成済みの支台歯スタンプに置き換えましょう。
今回は14,15番と24,26番にクラウン形成の支台歯を復位させます(img03)。
しっかりと縁上マージンを設定するために該当部位の歯肉部分を削りこみます(img04)。
こうして副模型の元が作られました。
下が調整終了後の状態(img05)。
全周にわたってしっかりと縁上マージンが設定されています。
左側6番だけは極端な縁上にはせずに、より臨床に近い歯肉のやや縁下にフィニッシングラインを設定(img06)しています。
この部位で各スキャナーの被写界深度の検証が行えたらいいかなと思います。
最後にこの模型にシリコンを流して型枠を作ります(img07)。
このゴム枠に石膏を流せば、先ほどの模型(可撤式作業模型)の単一式模型バージョンが完成します。
検証用模型の完成
硬化したゴム枠に超硬石膏を流して完成模型を確認します。
これで口腔内を想定した単一模型が完成しました。
単一模型であればコンタクトの強さのパラメーター設定を検証することもできますね。
単冠だけでなく連続する2歯分も検証できるので、より臨床的な実験もできるでしょう。
ただし石膏なので傷をつけないように取り扱いには注意が必要です。
次回予告
さてさて、次回はこの完成した適合テスト模型を使って実際にスキャンしていきましょう!
まずはラボ内システムであるセレックinLabの最新バージョンでラボマシンの精度を検証してみましょう。
スキャナー精度の検証。
言うのは簡単ですけど、その大変さは伝わりましたでしょうか?笑
次回をお楽しみに!
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歯科医師の方はもちろん、歯科技工士、歯科衛生士、学生、どなたでもお気軽にどうぞ。
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