Zirkonzahnミーティングで感じた歯科技工士の未来

ジルコンザーンCAD/CAM

ジルコンザーンCAD/CAM

もう3ヶ月も前のことですが『第8回Zirkonzahnミーティング』に参加してきたよというお話。

ジルコンザーン社の日本代理店であるトーシンデンタル様が主催する毎年恒例のユーザーミーティング。
今回はユーザー以外も参加が可能ということで歯科医師の方もチラホラと。定員60名の会場も満員です。

ミーティングのメインテーマは『プレーンシステムを用いた顎位の再現』と『新しいプレッタマテリアル』について。
大げさなようですが歯科技工士の未来を感じる内容でした。

ジルコンザーンはいかがでしょう?

DT.マメロン
ジルコンザーンってたまに聞くけどどんなメーカーなの?
欧米ではすごく有名なメーカーですよ。機械の精度もすごくいいし、ジルコニア材料も優れているけど、特にインプラント技工に強いシステムですね。個人的な一押しポイントは・・・見た目です!
DT.マメロン
つまり最高のシステムってことかな?
CAD/CAMに何を求めるのかは人それぞれだから最高かどうかわからないけど、憧れのシステムの一つですね。日本の場合は材料の認可の問題も多いからユーザーもまだ少ないですけど…

ジルコンザーンといえばジルコニアマテリアル

プレッタカラーリング

カラーリキッドアクアレルのインフィルトレーション(トーシンデンタルウェブサイトより)

ジルコンザーンがリリースしてきたジルコニア素材は非常にセンセーショナルなものばかりで、その代表的なものが『プレッタ(本場では”プレッタウ“と発音)』シリーズです。当社は福岡県内でいち早くこのプレッタを採用した歯科技工所でもあります。
透明感を持ちつつ強度も維持されたジルコニア素材として注目を集めた本材は、今ではどのメーカーも提唱している『インフィルトレーションテクニック』を応用するジルコニア素材の先駆け的存在でした。
インフィルトレーションとはシンタリング前の半焼結ジルコニアに、様々な色の薬液を浸透させることによってジルコニアフレーム自体に色調を持たせるためのテクニックで、より豊かな色調表現が可能になります。

ジルコンザーンはこうした革新的な材料開発にも力を入れているのです。

MAD/MAMという選択肢

ジルコグラフエコ

ジルコグラフシステム(トーシンデンタルウェブサイトより)

ジルコニアクラウンの製作にはCAD/CAMが必要というのが常識だった時代に、『マニュアル操作のハンドミリング』という切り口で解決を図ろうとしたのもこのメーカーの特徴です。
実際にハンドミリングで製作される技工物はミリングマシンと遜色のないレベルの加工が可能で、モックアップさえあればどんな形状にも加工が可能な手法です。
コピー元であるハイブリッドジャケット冠を製作する必要があるため製作に手間がかかりますが、コンピューター以上に自由な設計ができ、モックアップを用いて口腔内試適を行うこともできます。

とは言えすべて手作業でコピーミリングを行うため、指先の感覚が非常に重要で、術者の技術レベルによって仕上がりにバラツキが出てしまうという欠点もあります。また大きな症例を削るのにうんざりするほど時間がかかります…
そこに関しては歯科技工士の腕と根性の見せ所といったところでしょうか。
当社ではCAD/CAMを導入した後でもMAD/MAMのシステムを使い続けていますが、それぞれが全く別物で違う役割を果たしています。
デジタル全盛の今現在も使い続けることができるということはそれだけ練られたいい機械という証でしょう。

天才エンリコ・スティーガー氏の存在

こうした様々な概念や機械、材料を開発してきたのがジルコンザーン社長のエンリコ・スティーガー氏です。
歯科技工士でもあるエンリコ・スティーガー氏の天才的と言える商品のアイデアは、まさに歯科技工士の目線で作られており臨床で使いやすいものばかり。
世界規模でトップシェアを争い、業界を牽引する力を持った歯科メーカーの社長が歯科技工士であるということは非常に大きな意味を持ちます。

世の中の潮流としてはデータのやり取りを重視した完全なオープンシステムへの移行が主流になっていますが、ジルコンザーン社はシステムをオープン化させつつもクローズの要素も多々残しています。
ユーザーとしてはオープンシステムの方が使い勝手の良さを実感しやすいのですが、ジルコンザーン社はユーザー専用の多彩なマテリアルと、exocadをベースとした扱いやすい設計ソフト、強力なミリングマシン、インプラントメーカーとの連携といったクローズシステムらしさを武器に、世界中で多くのマニアを獲得しているのです。
こうした数々のコンセプトは臨床歯科技工士の理想的なイメージに非常に近く、単純な『使いやすさ』や『わかりやすさ』を超越した”ユーザー体験“に重きをおいている、数少ない『クローズドな要素の成功例』と言えるでしょう。
それもこれもエンリコ・スティーガー氏の打ち出すコンセプトが明確だからです。

なんでも削るよ

ジルコンザーンのミリングマシンは非常に高い加工精度を持ちます。
自社で様々なマテリアルを用意してあり、中には木製のディスクまで(何に使うのかという質問は野暮ですよ)あります。
木材も金属もPMMAもPEEKもジルコニアも…と、それぞれ物性が大きく異なるのでこれらをほぼ同じ精度で削り出すことは地味にすごいことです。
おそらく自社でマテリアルを厳密に製造管理しているからできることなのだと思います。
インプラントアバットメント作製のためにも金属を削り出す能力を持ち、特にインプラント技工に必要となるあらゆる設計や削り出しが可能で、ジルコンザーンのCAD/CAM一式と同社のマテリアルがあれば他にシステムは必要ないんじゃないかと思わされます。(日本は材料の認可の問題もありなんでもできるわけではありませんが)

要するにジルコンザーンは優秀なマテリアルのラインナップが豊富で、それらにチューンナップさせた強力なマシンを組み合わせて開発されているということです。

プレーンシステムとフェイスハンターと自然頭位

プレーンファインダー

フェイスハンター

今回のZirkonzahnミーティングにおいて、新しくリリースされた『プレーンシステム』の構成をじっくり見ることができました。
これは『プレーンファインダー』と『フェイスハンター』などいくつかの要素に分かれており、バイトフォークを患者に噛ませて顔貌を撮影することで正確な顎位データを取得し、咬合器上に再現するためのシステムです。
フェイスボウトランスファーのように解剖学的側面のみで位置決めを行うのではなく、視線を利用した自然な頭の位置とカンペル平面を基準とし、咬合器にトランスファーすることが大きな特徴です。
上顎位置は歯列データから削りだされたジョーポジショナーに記録され、ジルコンザーン社の咬合器『PS1』に取り付けられます。

咬合器PS1とジョーポジショナー

フェイスハンターで撮影された顔貌を含むデータは、咬合器『PS1』への移行だけではなく、CAD/CAM上のバーチャル咬合器へ移行させることも可能で、模型のみでは評価できない咬合平面やスマイルラインの走行、下顎の運動路を記録しより質の高い補綴物製作に活かされます。

新しいプレッタウとディスパーシブ

プレッタ4

プレッタ4(トーシンデンタルウェブサイトより)

上述のプレッタシリーズに新たなラインナップとして加わったのが『プレッタ4アンテリアディスパーシブ』です。
個人的にも待ちに待ったプレッタシリーズのマルチレイヤーディスク(色付きのグラデーションディスク)です。
見た目はかなりいいと感じましたがやはり若干は暗く、強度も600MPaとなるので適応は3ユニットブリッジまでとなります。
5YTZPなどの最新世代のジルコニアマテリアルは透明感を持つ代わりにどうしても暗くなりがちです。
天然歯のように明るく深みのある瑞々しい感じをフルアナトミカルのジルコニアで表現するのは結構難しいですね。
築盛すればもちろん美しいですが、下地となるフレームは明るめの状態から進めた方が調整しやすいのです。
となるとやはり築盛には4YTZPのマテリアルが適していることになるのでジルコニアマテリアルの使い分けには検証すべき点が山積みです。

気になる点としてはプレッタ2の場合はインフィルトレーション法で仕上げることが前提となっているのでブランクスは基本色(白)1色を揃えておけば大丈夫でした。
そのため『過剰な在庫を持たなくてよい』という大きな利点があるのですが、プレッタ4はVITAカラーが初めから付けられおり、症例に合わせてブロックの色を使い分けなければなりません。
さらに症例に合わせて厚みの違うディスクも在庫としてキープしなければならず、必然的に多くの在庫を用意することになってしまいます。
またユニバーサルサイズのディスクではカラーバリエーションが豊富ではないというのも残念ポイントですね。

ちなみに商品名の”ディスパーシブ“とは『分散』という意味で、グラデーションとは少しニュアンスが違います。
他社のマルチレイヤー型ジルコニアマテリアルのような、はっきりくっきりとしたグラデーションではなく、全体にデンチン感のあるボヤけたグラデーションといったイメージです。
ただこれは切縁部にインフィルトレーションを行えば済むことなので問題ありません。
問題ないどころか歯列は湾曲しているのでこっちの方が良いのです。
こんな具合に歯科技工士に『やれる余地』を残してるのも「らしいな」という印象のジルコニアマテリアルです。

 

歯科技工士の未来像の一つ

セミナー講師と

インストラクターの山崎竜氏と

今回のジルコンザーンミーティングを受けて改めて感じたのがジルコンザーンシステムの総合的な問題解決力の高さでした。それも非常に高い次元で様々な症例に対応できてしまいます。

これからの時代では歯科技工士の働き方は間違いなく多様化して行きます。
それは『一日中模型作りだけ』『研磨だけ』といった単純作業の分業化という意味ではなく、クリエイティブな要素のみにフォーカスして働くというワーキングスタイルの多様化という意味です。
ノートPCだけを持ち運んでCADデザインを専門に行う歯科技工士も誕生するだろうし、より高レベルなレイヤリングテクニックのみに集中的に特化する歯科技工士、歯科医の先生方や患者様へのカウンセリング業務を主とする歯科技工士も出てくるでしょう。
どんな時代であろうと理想と言えるのはクリニックとラボが非常に近い環境にあることだと思います。院内ラボがまさにそうですね。
もちろん院内技工士なんていうのは50年以上前から居たと思うのですが、補綴治療を行う上でのプランニング、予見、設計、製作、検証の全てをサポート可能なシステムを持った歯科技工士はとても貴重な存在になり得ます。
それにはジルコンザーンのようなトータルソリューションシステムが不可欠です。
ジルコンザーンのシステムとマテリアルの使い方を歯科医師と歯科技工士の双方で熟知し、お互いが近い距離感にある医療施設という環境が達成されるならば、その歯科技工士の働き方はまさに現代の歯科技工士の理想像の一つだと言えるのではないでしょうか。

 

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