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【シェードテイキングの基礎】口腔内写真が簡単に撮れる『基本カメラ設定』はこれだ!

歯科医療の現場で口腔内写真を記録に残すことは言うまでもなく非常に重要なことです。

歯科医師や歯科技工士にとって、自身の仕事が成功しているのか、改善すべきところはどこなのか、それを知る唯一の方法が口腔内を写真に記録することではないでしょうか。
以前B.O.P.T.の講演会に参加した際に、ロイ先生も「口腔内写真を残すことが歯科医師として最も重要な仕事」とおっしゃっていました。

「カメラは難しい」という言葉もよく耳にしますが、実はシェードテイキングも含め口腔内写真を撮影する上で、とくに難しい撮影技術などはありません。

口腔内写真撮影は、一般的な写真表現とは異なります。
カメラのいくつかの設定項目をチェックし、同じ規格で写真を撮り続けるだけです。
芸術的な感性も不要です。

ほんの数カ所の機能と設定方法を覚えるだけで、一生使える知識になります。
「写真は苦手」という先入観は捨てて、少しだけカメラの基本と向き合ってみましょう。

この記事を読み終える10分間で、生涯使える知識が身に付きますよ。

写真はなぜ写るのか

まずはじめに基本のキからおさらいしましょう。

写真が写る原理ですが、それはそこに『光があるから』です。

とても単純ですが大事なことなので理解しておきましょう。
カメラの設定とは『光の量』をコントロールすることです。

光はレンズに入り、『絞り』と『シャッター』を通過し、『フィルムや撮像素子』に受光することで写真が写ります。

光の質と量をコントロールする方法

口腔内写真の理想は、いつ、だれが、どのように撮っても同じように写ることです。
一般的な写真表現とは異なり、均質性や規格性が求められます。

それには光を完全にコントロールする必要があります。

部屋の電気の明かりや、窓からの太陽光など、様々な環境光(その空間の全てのミックス光源)をいっぺんにコントロールすることは不可能なので、カメラ側の設定ではわざと環境光が受光しないように設定します。
撮像素子に光が受光しないので、そのまま撮影すると一面真っ黒の写真になりますが、それで大丈夫です。
光自体は接写用のストロボを使って受光させましょう。

あとはストロボの光をコントロールすれば、常に思い通りの規格性のある写真が得られるでしょう。

レンズのピントも、カメラの設定も、全てをマニュアルモードで設定し、接写用のストロボを使用することが、光をコントロールする絶対条件になります。

口腔内写真が簡単に撮れる『基本カメラ設定』

それではカメラの基本的な設定の数値を紹介します。

以下の設定値は『一般的なデジタル一眼レフ(ミラーレス)カメラ』と『接写用ストロボ』の使用を前提としたものです。
また、初心者向けにあえて設定値を断言しておりますが、ストロボとの同調速度の関係など、お使いの機種により適宜セットアップしてください。

みなさんがお使いのカメラはほぼ100%デジタル一眼レフカメラ(ミラーレス含む)でしょう。
その場で簡単にチェックできるはずなので、どんどん調整してみてください。

 
絞り F16
シャッタースピード 1/250
ISO 100
ホワイトバランス マニュアル(プリセットマニュアル)
ピクチャースタイル ニュートラル

ユニットの横など、いつも口腔内撮影を行なっている場所でテスト撮影を行いましょう。
ストロボの電源を切った状態で撮影し、全面真っ暗な写真になれば準備完了です。

逆に言えば、この設定値でもぼんやりと写真が写るようであれば、その場所はシェードテイキングや口腔内撮影には不向きな場所だと言えます。

次に、それぞれの設定項目を見ていきましょう。

これだけは理解しておきたいカメラ側の設定項目

写真が写る仕組みを理解するために、最低限知っておきたい設定項目を簡単に解説していきます。

ここでの解説よりももう少し詳しく知りたい方は以下の記事も参考になさってください。

光を取り込む大きさをコントロールする『絞り』

絞りの開け閉め

『絞り』とは主にレンズに内蔵される機構で、レンズを通過する光の量をコントロールします。

絞りの数値が大きくなるほどレンズを通過する光の量は小さくなり、写真は暗くなります。
今回の設定値である『F16』は、かなり絞り込んだ数値で、暗く写ります。
一般的に、『絞り』を絞るほどに被写界深度(ピントの合う前後的な範囲)は深くなります。

光を取り込む時間をコントロールする『シャッタースピード』

デジタル一眼レフのシャッター

デジタル一眼レフのシャッター

『シャッタースピード』とは主にカメラボディに内蔵された機構で、カメラ内部まで通過する光の時間をコントロールします。
単位は秒で、今回の設定値であれば絞りを通過した光の束が、1/250秒間だけカメラ内部に取り込まれる設定です。

この1/250という数値は、カメラと、多くのクリップオンストロボ(カメラ本体に取り付けるタイプのストロボ)との、一般的な最高同調速度で、ハイスピードシンクロを用いないマクロストロボ撮影においては最も速い設定値です。

光量の大きなストロボなどを扱う場合は、同調速度の2倍ほどのシャッタースピードが推奨されるので、手振れや環境光の取り込みの問題をクリアできるなら、遅めのシャッタースピードが有利です。
口腔内撮影を行う場所によっては1/200や1/125などに設定するのも良いでしょう。

撮像素子の光の感度を表す『ISO』

デジタル一眼レフのイメージセンサー

デジタル一眼レフのイメージセンサー

撮像素子とは感光材のフィルムに相当するパーツで、イメージセンサーとも呼ばれるものです。

ISOとはこのイメージセンサーの光に対しての感度を設定しています。
ISOの数値が高ければ光に敏感になり、反対に数値が低いと鈍感になります。

このISOの数値が低いほど画質も良くなりますが、一般的なカメラであればISO100くらいから設定可能です。
口腔内撮影の場合は、環境光を可能な限り排除したいので、本記事ではISO100の鈍感な設定を推奨いたしました。

もちろんフィルムにもISOは一本ずつに設定してあり、ISO100であれば通常は晴天の屋外などで使用されるものになります。
フィルムカメラの場合は、撮影時の天候や場所によってフィルムを変更する必要があったので、ボタンひとつで操作できるデジタルカメラはものすごく便利になりましたね。

ちなみにフィルムであればISO1600だとかなり粒状感を感じる仕上がりになりますが、最新のデジタルカメラであればISO1600程度なら普通に綺麗に写ります。
常用ISO感度も100〜51,200のように、ケタ違いの性能になっているので、口腔内撮影の場合はISOを上げすぎないように注意しましょう。

白を白に写すためのホワイトバランス

出典:銀一公式サイト

カメラに馴染みの薄い方には「なんのこっちゃ?」と思われるかもしれませんが、人の目とは違い、カメラには白い物を白色だと認識することはできません。
カメラは撮影時の光源がどのようなものかを予め教えてあげないと、白いものを白く写せないのです。

例えば、カメラのホワイトバランス設定を『太陽光』にしたまま、白熱電球のような暖かい色味の光源の下で撮影すると、白色に写るべきものがオレンジ色になります。
当然白色だけに限らず、全ての色がオレンジがかった色になります。

それを補正してあげるためにホワイトバランスの設定を行います。

初心者のうちはオートホワイトバランスでもいいですが、これは早めに卒業しましょう。

次に簡単なのが色温度(ケルビン)の数値を自分で設定する方法です。
デジカメは撮ってすぐ確認できるので、お使いのストロボに合わせてお好みの数値に設定しましょう。
ストロボのスペックにもメーカー推奨の色温度が記載されていますので、それらを参考にしてもいいでしょう。

しっかりと撮影方法を管理したい場合は、マニュアルホワイトバランスを設定するのが一番です。
(ニコンでは『プリセットマニュアル』と言う機能に相当します。)

無彩色のカード類(反射率18%を推奨)を画面いっぱいに写し、その画像をカメラに登録することでホワイトバランスを取ることができます。


マニュアルホワイトバランスの設定方法の詳細は省きますが、カメラの取扱説明書に必ず載っていますのでそちらを参考にしてください。

忠実に色を表現しているピクチャースタイルを選ぼう

今回ご紹介するカメラ側の設定の最後の項目が『ピクチャースタイル』です。

ピクチャースタイルとは撮影する対象に合わせて、最適な色合いやコントラストを表現するためにカメラに内蔵された画像補正機能です。
(ニコンでは『ピクチャーコントロール』と言う機能に相当します。)

例えば風景写真であればグリーンや青などの色味が冴え渡り、スッキリとした画質にしたいかもしれません。
ポートレート(肖像写真)であれば健康的な肌の色味と、柔らかな髪質を表現したいかもしれません。

全ては撮影者の意図、センス、好みで『風景』や『ポートレート』『スタンダード』のように設定すればいいのですが、これは写真表現のお話し。

口腔内撮影で求められるのは、毎回『ありのまま』を記録することです。
もちろん設定すべきピクチャースタイルは『風景』でも『ポートレート』でも『スタンダード』でもありません。
『オート』も避けましょう。

基本的には最も補正量の少ない『ニュートラル』もしくは『忠実設定』に設定しておきましょう。

もし好みがあり、色かぶりを除去するための補正や、コントラスト設定を変更したい場合は、必ず普段お使いのPCモニターで写しながら変更しましょう。
カメラ本体のディスプレイはあまり優秀ではないので、カメラのディスプレイだけでピクチャースタイルをいじるのはおすすめしません。

ピクチャースタイルをオリジナルにカスタムするとなると、当然ながら優秀なカラーマネジメントモニターが必要になりますし、ある程度割り切ってしまいましょう。
ピクチャースタイルを完璧にカスタマイズするのは上級者向け(かなりのマニア)の設定で、そんなことよりもマニュアルホワイトバランスをきちんと取って、ストロボのバッテリーチェックなどのメンテナンスを行う方がよっぽど大事です。

「キヤノンよりもニコンの方が色味が〇〇」とかいう話がナンセンスなのは、正直「どっちもどっち」なのと、こんな重箱の隅をつつくよりも大事なことがたくさんあるからです。

コントロール可能な光源

出典:キヤノン公式サイト

カメラ側の設定が終わればいよいよ光源のコントロールです。

ここではリングタイプの接写用ストロボを前提に解説します。

チェアサイドではリングタイプの接写用ストロボの方が使い勝手も良くおすすめです。
口腔内写真はミラーを使いながらも臼歯部まで写す必要があるため、リングストロボの方が口の奥まで光を届けやすいためです。

前歯部シェードテイキングが主な目的であればツインストロボタイプの方が扱いやすいです。

いずれにせよ接写用のストロボは必須アイテムですのでぜひ揃えておきましょう。
口腔内撮影は歯科医療の中でも最も重要な工程の一つです。

ストロボ側の設定

接写用ストロボの光源の位置は、被写体に非常に近い位置にありますので、そもそも大きな光量は不要です。
ただし発光時の安定感やチャージタイムなども考慮すると、それなりの製品を選ぶべきです。

繰り返しになりますが、口腔内撮影の場合は光源は接写用マクロストロボのみに頼ることになるので、実績の高いストロボを使用しましょう。

さて、そのストロボの設定に関して言うと、撮影した写真を確認しながら最適な露光量を探るのが一番簡単で確実です。
ストロボは製品ごとにガイドナンバー(最大光量の目安)が異なるので、お手持ちのストロボで適宜調整してください。
その方法は、写真が暗いと思ったらストロボの光量を上げて、明るいと思ったら光量を下げてください。

簡単です。

性能の高いマクロストロボであればTTL機能(カメラの設定に合わせて発行量を自動調整)を使っても良いですが、常に同じ結果を得たいのであればストロボもマニュアルで設定しましょう。

『1/1』と言う数値がそのストロボの最大光量を表しております。

左右の発行量もバランス良く調整しましょう。

おわりに

素晴らしい機種や周辺機器を揃えても、撮影の基本的な理解が無ければ機械任せの『オート』で撮影するしかありません。

確かに写ります。オートでも。

でも写真を複数枚並べた時に色味がバラバラだったり、ピントが浅かったり深かったり、手振れしていたりすると、信頼できる『医療のデータ』とは言えないのではないでしょうか。

規格性のあるデータとして記録するにはマニュアルによる設定が最も簡単で、かつ美しく撮影できます。

ほんの数カ所の設定方法を理解するだけです。

しかも歯科医師の場合はラッキーなことに、写真を記録することで保険点数も加算されます。
撮影に報酬があるということは、これはある意味…プロカメラマン!?
「撮影の勉強は必須」ですよね。

まずは基本的なカメラ設定の方法を覚えて、記録の質を高める口腔内撮影に、是非チャレンジしてみてください。

シェードテイキングに関する全ての記事へのリンクをまとめました。


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